無印良品「通気性のよい体圧分散敷ふとん」はアリやナシや


現在無印良品は10%OFFの「無印良品週間」を開催中。
色々と買う人も多いと思います。私もクローゼット用のハンガーを買い足したりしました。


私は無印良品信者でもなければ、アンチでもありません。
ファンとは言いませんが、長年のユーザーではあります。
あくまでも一ユーザーの立場から、具体的な製品の賛否を書きました。ある意味無責任な放言でもあります。


が、今回は自分の専門分野に関して、ちゃんとした批評をしたいと思います。

無印良品 通気性のよい体圧分散敷ふとん

3月に新発売となった「通気性のよい体圧分散敷ふとん」について。


この手の点で支える「体圧分散」系のふとんは、以前言及した西川のムアツふとんから始まり、約40年の歴史があります。
特許関係があったので、基本的に西川グループ各社や実際の製造ファクトリー以外からは類似品が出て来ませんでしたが、ついにそこに無印良品が目をつけたか!というのが発売を知った時の感想でした。
しかも値段も2万5千円とこの手の製品としてはかなり安いです。というか利益を出すのが不可能に近い価格だとすら思いました。
全国の無印の店舗で、しかもこの値段買えるんだったらこれはおそろしく売れるかもしれない…とその出現に怯えました。


が。


店頭で実物を見たら、全然ダメです、これ。


むしろこの値段だと高い気がします。
安堵したのと同時に遺憾に思いました。



作り方は手が込んでいますが、とにかく素材の質が全然良くありません。
例えるならば、あまり質の良くない刺身に上手に隠し包丁を入れてなんとか食べられるようにしたようなもの。


私自身は化学畑ではないのであまり詳しくはないのですが、それでもこの無印良品の「通気性のよい体圧分散敷ふとん」に使われているウレタンフォームは見るからに安物だということがわかります。
いわゆる「スポンジ」に毛が生えたようなものというか。
手前味噌ですが、私のデザインした西川産業『AiR』に使われているウレタンはもっとしっとりしているというか、触ると違いが明らかです。
徳用のカステラと、OGGIのガトーショコラとでは同じスポンジケーキでも全然違いますよね。味も密度(食べ応え)も。
材料が全然違うじゃないか、と思われたと思いますが、そう、ウレタンフォームも同じことです。レシピが違うんですね。
ウレタンの質が違えば、反発の仕方も違いますので寝心地も全然違いますし、耐久性も全然違います。


ウレタンフォームの硬さはJISによって測定法が決まっており、「ニュートン(N)」を単位として表示します。
世代によって「ニュートン」への馴染みが違うと思いますが、理科の授業で「1キログラム重=9.8ニュートン」ってやったアレです。
ウレタンの硬さ即イコール耐久性、ではありませんが、一つの指標ではあります。
基本的に密度が低い(スカスカしている)ものには硬さがありません。要は安物、てことです。
『AiR』はBASICタイプでも100Nありますが、「通気性のよい体圧分散敷ふとん」は60Nしかありません。
しかもこの無印のは厚みが7cmしかありません。西川のムアツ系は基本的に8cm以上あります。厚みは当然寝心地に影響しますが、材料費ケチって7/8にしましたね、って感じです。
「カビの原因のこもりがちな湿気を外に逃すムレにくい構造」と言うことで、裏面は凸凹になっていますから、厳密に言うともうちょっと材料費は下がっています。


おそらく、この「通気性のよい体圧分散敷ふとん」は2〜3年は使えると思います。
普通のわたの敷きふとんよりは寝心地も良いと思います。
ただし、この手の敷きふとんの中では松竹梅の梅(最低ランク)でしょう。


とにかく、無印良品の影響力は大きいので、こういう半端モノを出されると、このジャンルの製品全体に対して「この程度のものか」と多くの人に思われてしまいかねないので本当に困ります。
良品計画と○○と○○の奴らめ余計なことしやがって…!という感じです。名前は伏せますが。


あと、白無地の寝具が欲しい、というニーズがあるのはわかりますが、ウレタンは物質特性上どうしても経時変化で黄色くなります。だから白いウレタンの敷きふとんはあまりないんですが、無印良品はその辺どう考えているのかなあ、と思います。


『AiR』のスポーツテイストのスタイリングは寝室にはちょっと…、という場合には、いわゆる寝具調の『健圧敷きふとん』という製品もあります。サイズや仕様が異なりますが、姉妹版の製品です。
この製品はイトーヨーカドーでも取り扱っているので、無印良品の「通気性のよい体圧分散敷ふとん」と寝比べてみて下さい。
その上で値段を考慮して決めれば間違いないと思いますので。