サヴォワ邸内



夏の旅行記を未完成のまま放ったらかしていたので、続きを書きます。


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ついにサヴォワ邸体感の日がやってきました。



東大の建築学科に進学するとまず最初に模写させられるのがこのサヴォワ邸の図面です。
35年くらい前の親の頃からそうらしいですし、多分今でもそうでしょう。
例えていうならば、高校の国語の授業で誰もが日本文学の傑作とされる『源氏物語』を読むようなものでしょうか。
それくらいの重要にして定番な建築です。



今から80年も前の1929年、コルビュジエ42歳の作。
今なお多くの人々を魅了して止まない名作です。


wikipediaで何でも一通りわかってしまうこのご時世に敢えて説明するのもなんですが、
サヴォワ邸は20世紀建築界の最大の巨匠ル・コルビュジエの代表作の住宅です。
(但し住宅といっても別荘的なものだったっぽいですが。)
コルビュジエ大先生の唱えた「近代建築の5原則」、ピロティ、屋上庭園、自由なプラン、自由な立面、独立骨体が体現されています。


「5原則」の5つ目は「連続水平窓」と書かれていることが多いと思いますが、
私がその言説・著作を盲信する磯崎新氏は「独立骨体」としているので
私もそれに倣うことにしています。





今までコルビュジエの主要な建築は大体見ているのですが、サヴォワ邸には感激しました。



そんなに大きい建造物でもありません。


各地の世界遺産クラスの大聖堂は、途方もない歳月と信仰心と労働力と権力とが注ぎ込まれて出来ていますから、人の心を震わせる力があるのも当然というものです。



厳選された素材でできているわけでもないと思います。


コルビュジエと同時代のもう一人の巨匠であるミース・ファン・デア・ローエの、日本料理や日本刀のようなシンプルに見えて実は厳選された素材と入念な下拵えが施された建築とも違います。
(ミースの建築は安い部材で作ったら魅力が半減する気がします)


もう一人の巨匠F.L.ライトのように、入念にフラクタルな装飾を施すことで格別に良質な材料を用いずともリッチな空間を作り出す、という手法とも違います(勿論ライト建築の良さは装飾性だけではありませんが)。



コルビュジエ建築も後期になると赤黄緑青という原色が重要な役割を果たすようになりますが(曰く「色彩は彫刻と建築に生命をふきこむ」)、このサヴォワ邸にはそれもありません。
なんというか、純粋な建築というか空間の持つ力が、白く照り輝きながら原っぱの中に存在している、そんな風に感じました。
仮にサヴォワ邸の外壁が白ではなく、黒に塗られていたり、コンクリート打ち放しのグレーだったりしたとしても、印象は随分違うと思いますが、それでも感激させられることに変わりはないと思います。


大して大きくないこの3階建ての住宅は外観からすると単純そうですが、内部は実に変化に富んでいました。
過去図面を模写した時には全く読み取れていませんでした。
自分が思い描いていたのと全然違いました。


えっ!ここに風呂!?2階半分テラス!?とか。(自由なプラン炸裂です)


そして、その2階のテラスに臨むリビング。
陽光の中に溶けていきそうになります。


また、屋上庭園の気持ちの良いこと。



ああ、もっと早く観に来れば良かったー。



パリに行って、定番の観光スポット巡りが済んだら真っ先に見に行くべきだと思います。
ルーブルとか後回しで!(私パリを3回訪れましたが未だにルーブル行ったことがありません)




ちなみに当たり前といえば当たり前ですが、結構あちこちに収納スペースががありました。
住宅ですもんね。