北斎の波


というわけでお伊勢参りもしましたが、メインの目的地は四日市


四日市というと喘息くらいしか連想しないのが普通だと思いますが、なにか見所ないかなと調べたら、なななんと、1970年の大阪万博のオーストラリアのパビリオンが移築されて現存しているらしい、というではありませんか。
それは観に行くしかありません。
なにせ大阪万博の建造物は太陽の塔くらいしか残ってないんですから。菊竹さんのエキスポタワーも数年前に解体されてしまいましたし。
オーストラリア館は大阪万博のパビリオン百花繚乱の中、比較的アクロバティックなパビリオンと言えるでしょう。


これですよ!?

これは観に行くしかありません。


というわけで、名古屋から近鉄に乗って、小一時間。
霞ヶ浦駅の東口から線路に垂直に真っ直ぐずんずん進むと、オーストラリア館と四日市ドームの屋根が見えてきます。
競輪場の横を奥まで入って行って、



到着!!




いやー、無茶な建築だなあこれ…、と思わず笑みがこぼれてしまいました。
内部を無柱空間にするため、首長竜みたいなので上から屋根を吊っているわけですが、大仕掛けの割に内部空間はそんなに広くなさそうでした。
後ろに廻ると本当にブロントサウルスの背中みたいです。ブロントサウルスを見たことはありませんが。



ちなみにこのブロントサウルスの背中内部にもちょっとした展示スペースがありました。
一枚目の写真の模型もこの中の展示物です。
模型の半地下のシリンダー状の部分も移築してあったらもっと面白かっただろうに、残念です。


こんなのが林立していた大阪万博というのは本当にお祭りだったんだろうなあ…。
大阪万博の興奮と熱狂と当時の日本が楽観的に思い描いていた未来の姿の一片を今に伝えるこのオーストラリア館の存在は、もっと広く知られていてしかるべきだと思うのですが、建築関係者にもあまり知られていないような気がします。


駅から向かう途中、プロレス興行のポスターを見付けました。

今でも体育館的に実際に利用されているようで、嬉しいと言うかほっとしました。建物は使われながら残るのが一番ですから。



隣には四日市ドームがありました。
建築構造の授業で四日市ドームって出てきたような気もします。
外観より内部から見る屋根(内部から見える部分は「天井」と呼ぶべきですが)の方が格好良かったです。



そして、オーストラリア館の対岸には、工場が。


これは格好いい…。多分夜だと相当幻想的に輝いているのでは。
『工場萌え』なんて写真集が出る訳です。
一般的には『FF7』の神羅カンパニーの魔晄炉が工場萌えの嚆矢となったような気がします。
私はガンダムマクロスエヴァンゲリオン攻殻機動隊も観ていない非メカ属性なのですが、工場属性が結構高そうだ、ということを気付かされました。


他にも萬古焼があったりと数寄者にはオススメな観光地です。


ついでに言うと『AiR』の側地(カバー)を作っているのも四日市でだったりします。
http://www.airsleep.jp



◇◇◇◇◇



ところで、このオーストラリア館は葛飾北斎の尤も有名な富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」にインスパイアされた造形なのだそうです。そう言われてみれば、確かに波の形です。


北斎と言えば、墨田区『すみだ北斎美術館』のロゴマーク募集に応募していたのでした。


同じように「神奈川沖浪裏」の波と「尾州不二見原」(桶屋の富士)の桶をモチーフにした、こんな案を出しました。敢え無く選外でしたが…。




円がそれぞれ波と桶を、富士の稜線がMuseumの「M」を表しています。
ちょっとごちゃごちゃしてしまった「すみだ」の文字の扱いが敗因だったかもしれません。クライアントが墨田区なのに「すみだ」を切り離して小さくしちゃったわけですし。


妹島さんの設計はなかなか難航しているらしい、とも伝え聞いていますが、果たしてどのような美術館ができるのでしょうか。





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